生成AIの定着は「最初の一歩」で決まる!デンカのAI活用を前倒しさせた“常駐型の生成AI相談窓口”支援

デンカ株式会社
デジタル戦略部長 日本コンクリート工学会フェロー 盛岡 実 様
デジタル戦略部 松尾 裕樹 様
生成AIの導入が進む一方で、「導入したのに使われない」という課題は多くの企業に共通しています。
総合化学メーカーのデンカ様も、生成AI活用を全社に定着させるためには、単なるツール提供だけでは不十分だと感じていました。
そこで同社は、部門や職種を問わず、日々リアルな業務課題に向き合っている職場や従業員一人ひとり(以下「現場」)の心理的ハードルを下げ、それぞれの疑問や課題をその場で解消していく「生成AI相談窓口」機能を社内に設置し、現場の利活用を着実に促進する取り組みを進めました。
本記事では、その背景や推進プロセス、そして成果を通じて、AI活用を“定着”させるための鍵をご紹介します。
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課題
・生成AIを導入したが、使うのは一部の人に留まっていた。
・情報提供は進めていたが、業務で使うきっかけを作れていなかった。
・利用者の悩みは“100人100通り”で、個々の課題に対応できていなかった。 -
解決策
・現場の疑問や課題をその場で相談できる生成AI相談窓口を設置。
・定期訪問・予約制で、個人や少人数単位の相談機会を用意。
・対話とハンズオンを通じて、業務に即した活用をその場で支援。 -
効果
・活用初期の不安が解消され、Copilot利用希望者が増加。
・当初計画していたアカウント利用者数を上回る。
・2030年に向けたCopilot活用計画の前倒し達成が見え始めた。
課題
・生成AIを導入したが、使うのは一部の人に留まっていた。
・情報提供は進めていたが、業務で使うきっかけを作れていなかった。
・利用者の悩みは“100人100通り”で、個々の課題に対応できていなかった。

デンカのDX戦略と生成AIの現在地
総合化学メーカーの「現在」とデジタル戦略部の「ミッション」
総合化学メーカーとして100年以上の歴史を持つ当社は、電子・先端プロダクツ、ライフイノベーションなど4部門を中心に幅広い分野で事業を展開しています。
多様な事業を展開する当社において、全社横断でデジタル変革を推進しているのがデジタル戦略部です。同部は、全社的な業務変革を進めるため、次の3つのミッションを掲げています。
① 全体最適化の推進: 部分最適化を抑止し、成果を「1→10→100」にスケールさせます。
② 投資対効果の最大化: 標準化を推進し、二重・三重投資を抑制。「最小の投資・最短の期間で、最大の効果」を追求します。
③ DX人財の育成・活用: DXを実現するための人財を育成し、活用します。
これらのミッションを実現するための指針として全社的に体系化されたものが、デンカ独自の「DDXロードマップ」です。このロードマップを拠りどころに、当社は全社的なDXを段階的に前進させており、その中心的役割を担っているのがデジタル戦略部なのです。
生成AI活用の背景と“現状”
生成AIの導入を本格的に検討し始めたのは、全社でDX推進の取り組みが加速していた2024年度のことでした。
デジタル戦略部が中心となって業務のデジタル化・標準化を進める中で、社内では次第に「AIネイティブの時代において、AIを使わないという選択肢はない」という強い危機感が共有されていきました。
単なるトレンド対応ではなく、“AIを使いこなす力”を企業競争力として育てることが不可欠である——。
この共通認識が、生成AI導入を後押しする大きな原動力となりました。
こうした方針のもと、Microsoft 365 Copilot(以下、Copilot)を中心とした生成AI環境の整備を進めました。併せて、社内に蓄積された膨大な情報を横断的に検索・活用できる横断検索システムも構築し、データ活用基盤を強化しています。
まずは、ブラウザ版Copilotを全従業員が利用できる環境を整備し、社員が日常的に生成AIに触れられる土台をつくりました。
一方で、有償版のCopilotについては、2024年に本社部門を中心に約100名で試行を実施しました。その結果、業務改善に有効であるとの評価を得て、本年度より全社展開を開始しています。
また、当社はアカウントを“バラマキ的”に配布するのではなく、実際に業務での利用が見込まれる部門や人材を確認しながら、段階的にアカウントを付与する方針をとっています。
そのため、本年度は300アカウントの計画を掲げ、着実な利用定着を図ろうとしていました。
なぜデンカは「生成AI相談窓口」に踏み切ったのか?
「伝えているのに伝わらない」 一方向の情報発信の限界

生成AIの導入を進める中で、最初に直面したのは、「情報を発信しても、社員の行動が変わらない」という壁でした。
活用事例や操作ガイドを社内ポータルサイトに掲載したり、Teams上で動画コンテンツを共有したりと、情報提供の取り組みは積極的に進めていました。しかし、それだけでは社員が生成AIを業務で活用するきっかけにはつながりません。
「知ってほしい情報が届かない」
「知ってもらっても、実際の活用には結びつかない」——。
こうした状況を受け、デジタル戦略部ではどれだけ正しい情報を発信しても、一方向のコミュニケーションだけでは人の“行動”は変わらないという課題認識が強まっていきました。
AI活用を社内に根づかせるためには、現場の疑問や不安に直接向き合い、対話を通じて解消していく仕組みが必要だ——。
その気づきこそが、後に「生成AI相談窓口」の設立へとつながる、重要な転換点となりました。
悩みは“100人100通り” ユーザーごとに異なる課題
情報発信のあり方を見直す中で明らかになったのは、ユーザーごとに抱える課題がまったく異なるという現実でした。
Copilotを開いても「何をすればいいのか分からない」、
「自分の業務にどう活かせるのかイメージできない」——。
そんな戸惑いの声が多く寄せられる一方で、生成AIへの期待値はますます高まっていく。結果として、現場では「期待と実際の活用との間にギャップ」が生まれていました。
さらに、営業・製造・研究・管理部門など、業務内容も役割も大きく異なるため、「正しい使い方」の形は一つではありません。その結果、一律の研修やマニュアルでは対応しきれない状況に直面していました。
まさに「100人いれば100通りの課題」が存在する状態。
その一人ひとりに寄り添い、現場ごとの最適解を導くためには、全社横断で“個別最適”を実現できる新たな支援の仕組みが求められていたのです。
活用初期の心理的ハードルを下げる“駆け込み寺”が必要だった

さらに、生成AI活用が進まない背景には、技術面だけでなく心理的なハードルも存在していました。
「興味はあるけれど、どう使えばいいのか分からない」
「質問したいけれど、誰に聞けばいいのか分からない」——。
こうした不安や迷いは、活用初期に特に大きく、行動のブレーキになっていました。
そこでデジタル戦略部が着目したのが、社員が気軽に相談できる“生成AI相談窓口”という新しい支援の形です。
一方向の情報提供では埋まらない疑問や不安に寄り添い、初期のつまずきをその場で解消できる“駆け込み寺”のような存在をつくること。
これこそが、生成AI活用を社内に広げ、定着へつなげるために欠かせない仕組みだと考えたのです。
解決策
・現場の疑問や課題をその場で相談できる生成AI相談窓口を設置。
・定期訪問・予約制で、個人や少人数単位の相談機会を用意。
・対話とハンズオンを通じて、業務に即した活用をその場で支援。
「常駐型生成AI相談窓口」支援の全貌
なぜ「内製」では限界があったのか
しかし、これをすべて内製でまかなうには限界がありました。
理由は大きく3つあります。
①個別対応の負担が非常に大きかったこと
ユーザーの悩みは“100人100通り”で、部門横断で一人ひとりに合わせた個別最適が求められます。部門ごとに業務内容が大きく異なるため、通常業務と兼務しながら対応するのは現実的ではありませんでした。
②“最初の一歩”を支援するには、高度なファシリテーションと対話力が必要だったこと
「そもそもどこを押せばいいのか分からない」「何をしていいのか分からない」といった初歩的なつまずきを、1対1で丁寧にほどくスキルが求められました。こうした寄り添い型の支援は、通常のITサポートとは異なる専門性が必要です。
③ユースケースと最新技術に精通した専門人材の力が必要だったこと
生成AIは進化が速く、現場ごとの多様な課題に最適な活用方法を提案するには、豊富なユースケースと最新技術に精通した専門人材が不可欠でした。
これらを踏まえ、「社員に寄り添いながら、生成AI活用を日常レベルで支援する」というミッションは、高度なコミュニケーション力とAIの専門知識を兼ね備えた外部プロフェッショナルに任せる方が、より大きな成果につながると結論づけたのです。
なぜギブリーだったのか?
生成AIの社内普及を担う松尾を中心とした推進メンバーの環境整備やお膳立ては完璧に近いものでした。それでもなお、社内利用の広がりは鈍いものでした。
そのとき私の中で、「“ティーチング”ではなく“コーチング”が必要だ」という考えが強くなっていきました。
こうした課題感を強く意識したタイミングで、ITリーダーが集まるあるサミットで、ギブリーと出会いました。立ち話の中で当社が抱える課題を伝え、「御社はコーチング出来る?。現場の懐に飛び込んで個々の悩みを解消していく“人たらし”が必要なんだけど」と聞いたところ、間髪入れずに「それ出来ます」と返ってきたんです。正直、最初は「本当かよ?」と半信半疑でしたが、実際にミーティングを重ね、トライアルを始めたところ、手応えを実感しました。
これまでの経験上、IT系の人財は専門性が高くても、コミュニケーションがあまり上手くなくて、“人たらし”はいない、という印象がありましたが、ギブリーはそれを払拭してくれました。これが選定に至った決め手です。
現場に寄り添う“常駐型”支援の全貌
こうして「常駐型の支援」という方向性が定まり、実際の運用として形にしたのが、当社が導入した「ピットストップ型生成AI相談窓口支援(常駐型)」です。
本取り組みは、社員が日々の業務で直面する疑問や課題を、その場で・個別に・即時に解消できるよう設計された支援モデルです。
特徴は、単なる問い合わせ窓口ではなく、支援担当者が常駐し、相談に直接向き合うこと。日常業務の中で「気になったらすぐ聞ける」環境を作ることを重視しています。
支援は定期訪問・30分枠の予約制で運営され、相談者は個別または少人数のチーム単位で参加します。対話形式で課題を共有し、その場でPCを操作しながら、実務に即したハンズオン支援や、生成AI活用に関するさまざまな相談・提案にも柔軟に対応できる仕組みです。
そのため、寄せられる質問は、Copilotの基本操作にとどまらず、
・他の生成AIモデルとの違い
・プロンプトの工夫
・調べものや資料作成に役立つ思考プロセスなど、利用者の業務内容に応じて多岐にわたります。
このように、現場に寄り添った常駐型の支援体制を整えることで、社員一人ひとりが抱える課題に即時対応できる仕組みを構築しています。
本社だけでは終わらない。部署や拠点への広がり
「常駐型生成AI相談窓口」は、本社での試行をきっかけに、徐々に全社へと広がりを見せていきました。
もともとはCopilotの試行フェーズに合わせて本社部門を中心に実施していましたが、その効果と反響の大きさから、研究・製造拠点へも展開する方針が決定。
まずは千葉工場からスタートし、続いてイノベーションセンター、大牟田工場、青海工場へと順次広がりました。さらに、伊勢崎工場や五泉事業所など、全国各地の拠点にも展開が進んでいます。
各拠点では、経営層やマネージャー層から一般社員まで幅広く参加し、生成AIの活用方法を学ぶだけでなく、日々の業務で直面している具体的な課題を共有し、解決につなげる場となりました。
こうした取り組みが進む中で、社内には次第に「生成AIは特定の職種や部門だけのものではなく、誰にとっても業務を支えるツールである」という認識が浸透していきました。
本社発の取り組みが、現場の実践を通じて全社的な文化へと変わりつつあるのです。
役員も驚いた。「こんなサービスは初めてだ」という声
現場での反応も非常に大きなものでした。
初回の実施時、ある役員は「40年勤めてきて、こんなサービスを受けたのは初めてだ」と感激したといいます。
それほど、現場に寄り添い、社員一人ひとりの疑問に直接応えるこの取り組みは、これまでにない“実践的な体験”として受け止められたのです。
特に工場での開催では、参加者が自身のPCを操作しながら学ぶハンズオン形式が大きな効果を発揮しました。
「実際に触ってみたら理解が一気に深まった」
「これなら自分の業務にも使えそうだ」
といった声が多く、生成AIに対する“難しそう”という先入観や、”よくわからない”という戸惑いは次第に消えていきました。
こうした導入初期の成功体験が、現場の空気を大きく変えました。「AIは自分たちの味方だ」「もっと活用してみたい」という前向きな意識が広がり、社内全体にポジティブな変化の連鎖が生まれたのです。
まさに、最初の成功体験が現場を動かす原動力となった瞬間でした。
効果
・活用初期の不安が解消され、Copilot利用希望者が増加。
・当初計画していたアカウント利用者数を上回る。
・2030年に向けたCopilot活用計画の前倒し達成が見え始めた。
生成AI活用が想定以上のスピードで普及
全社の空気が変わった。Copilot活用が加速した“目に見える変化”

「常駐型生成AI相談窓口」の取り組みを通じて、社内には明確な変化が生まれました。
最も大きな成果は、社員の生成AIに対する意識と行動が劇的に変化したことでした。
これまで「興味はあるが、どう使えばいいか分からない」と感じていた社員が、相談窓口で疑問をその場で解消することで“使える実感”を持ち始め、社内全体の活用機運が一気に高まりました。
その結果、Copilotの利用希望者が急増。今年度300アカウントを目標としていた全社展開は、すでに約350アカウントまで拡大しており、本年度中には400アカウントへ拡張する見込みです。
これにより、DDXロードマップで掲げていた「2030年までに1,000人がCopilotを活用する」という計画についても、前倒しで達成できる兆しが見え始めています。
また、各部門からは活用アイデアが次々と生まれています。資料作成や議事録作成といった定型業務にとどまらず、研究開発、営業提案、品質管理など、より高度で専門性の高い業務領域へと活用が広がりつつあります。
このように相談窓口は単なるサポートの場ではなく、“利用しない理由を減らし、使いたい理由を増やす”装置として機能しました。社員一人ひとりの成功体験が積み重なり、組織全体のAI活用文化が着実に加速しています。
なぜ成果が出たのか
デンカが感じた“支援の価値”とは
今回の取り組みで大きな成果を上げることができた背景には、単なる利用サポートにとどまらない、技術と業務の両面からの伴走支援がありました。
まず、支援を担当したギブリーは、Copilotに限らず、さまざまな生成AIツールやモデルに関する幅広い知識を持っていました。そのため、特定の製品やベンダーに左右されず「目的を達成するために最適な手段は何か」という視点でアドバイスができたことが大きな価値だったといいます。
また、生成AIに対する期待が先行し、現実とのギャップに戸惑うユーザーも少なくありませんでした。こうした中でギブリーは、ユーザーが持つ期待値を丁寧に整理し、正しい理解へ導く説明力を発揮しました。
さらに、「できること」だけでなく「できない理由」も明確に伝えることで、ユーザーが安心して相談できる関係性を築くことにつながりました。
技術的な知識に加え、業務理解の観点からも寄り添い、ユーザーが自ら“正しい判断”を下せるよう導く。こうした伴走こそが、当社が強く感じた支援の本質的な価値だったのです。
今後の展望
“支援”から“自走”へ。デンカが描く生成AI活用の未来

「ピットストップ型生成AI相談窓口支援」は、DDXロードマップの最初の壁を突破する大きな転機となりました。これまで“導入”や“利用促進”といったフェーズに留まっていた生成AI活用は、いまや“自走フェーズ”へと移行しつつあります。
現場の社員が自ら課題を見つけ、AIを使って解決策を導き出す。そうした主体的な姿勢が、少しずつ社内に根付き始めています。
デジタル戦略部としても、今後は支援の中心を「教える」から「任せる」へシフトし、各部門が自ら活用を進められる体制づくりを目指しています。
この取り組みは、単なる相談対応や技術支援にとどまらず、組織全体にAIを前向きに活用する文化を生み出すきっかけとなりました。
デンカは今後も、AIを“使う”企業から、“使いこなす”企業へ。そして、AIを起点に新たな価値を創出できる企業へと進化し続けていきます。
AIイネーブルメント支援のご案内

株式会社ギブリーでは、組織のAI活用を「検討」「導入」「普及・定着」から、最終的な「変革・事業創出」へと導くためのロードマップに基づき、企業の変革を支援しています。
本レポートでご紹介したデンカ様の事例は、まさにこのマップにおける「普及・定着」フェーズの実践例です。
常駐型の支援を通じて、
・使われない
・活用粒度が揃わない
・現場の心理的ハードルが高い
といった“定着の壁”を乗り越え、現場を中心としたAI活用文化の形成へとつながりました。当社の取り組みが示すように、AI活用はツールを導入しただけでは前に進めず、「定着を支える仕組み」が不可欠です。
・AIを全社で導入したものの、思うように活用が進まない
・社員ごとに活用レベルの差が大きい
・現場に根付く“使われる仕組み”を作りたい
このようなお考えの企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
貴社の状況に合わせた最適なAI活用定着のアプローチをご提案いたします。
▼「Givery AIイネーブルメント」に関する問合せはこちら
https://givery-consulting.com/jp/contact/

デンカ株式会社
デンカ株式会社は、1915年の創業以来、100年を超える技術と経験を基盤に、化学の力で社会課題の解決に挑み続けてきた総合化学メーカーです。電子・先端プロダクツ、ライフイノベーションなど多領域で事業を展開し、世界の暮らしと産業を支えています。同社は「Denka Digital Transformation(DDX)」のもと、業務効率化にとどまらない、価値創造型のデジタル変革を推進。近年では、全社的な生成AI活用の加速に加え、新規事業開発におけるAI活用にも本格着手し、若手がベテランと同等の成果を出せる仕組みづくりによって、持続的な成長とイノベーション創出を目指しています。
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