プロジェクト

日立ソリューションズ、生成AI利用率「35%→85%」へ向上。約1,100件の応募が集まるアイデアコンテストの舞台裏

株式会社日立ソリューションズ

AIトランスフォーメーション推進本部 AX戦略部 部長 宮崎 邦彦 様

AIトランスフォーメーション推進本部 AX戦略部 部長代理 酉和 泰俊 様

  • IT・通信
  • 情報システム

「生成AIを導入しても、一部の利用にとどまり、全社的な変革には至らない」。
そのような課題を抱える企業は少なくありません。

しかし、日立ソリューションズでは異なる結果となりました。2024年12月時点での業務でほぼ毎日利用する社員の割合は35%。そこから約9か月で85%へ向上しています。

その転機となったのが、全社を巻き込んだ生成AI活用のアイデアコンテストです。
経営による明確な方針提示と、現場の自発性を掛け合わせ、「まずは全員がAIに触れる機会をつくる」ことを目的に
、 参加ハードルを徹底的に下げた全社参加型コンテストを設計しました。この取り組みは単なるツール浸透にとどまらず、
組織文化と事業の双方に変化をもたらす仕組みへと発展しました。
なぜ、短期間で全社浸透を実現できたのか。その舞台裏と設計思想を、推進責任者の言葉とともにひもときます。
<日立ソリューションズ公式サイト>
https://www.hitachi-solutions.co.jp/

  1. 課題

    ・生成AIの関心は高い一方、業務利用率は35%に留まる
    ・「業務のAI適用箇所がわからない」という声が多く、関心層が活用への一歩を踏み出せない
    ・社内の情報発信やコミュニティ活動だけでは、全社的なムーブメント創出の決定打に欠けていた

  2. 解決策

    ・経営主導で「利用率100%」という明確な目標を掲げ、トップダウンで方針を示す
    ・組織風土に適した全社員参加型施策として生成AI活用アイデアコンテストの設計・実施

  3. 効果

    ・生成AIの業務利用率が35%から85%へ向上
    ・約1,100件の応募から実務に直結するユースケースが約100件創出・横展開
    ・AIの日常的な活用が組織文化に浸透し現場の自発的な活用が進んだ

ISSUE

課題

・生成AIの関心は高い一方、業務利用率は35%に留まる
・「業務のAI適用箇所がわからない」という声が多く、関心層が活用への一歩を踏み出せない
・社内の情報発信やコミュニティ活動だけでは、全社的なムーブメント創出の決定打に欠けていた

全社AI推進の立ち上げの背景

経営判断で設立された「AIトランスフォーメーション推進本部」

—まず、日立ソリューションズ様の会社概要と、AI推進における組織の立ち位置について教えてください。

宮崎氏:当社は、日立グループの中核を担うシステムインテグレーター(以下、SIer)です。従業員は単体で約5,000人、国内外のグループ会社を合わせると約15,000人規模になります。2022年末のChatGPT登場以降、生成AIが経営に与えるインパクトの大きさを全社として認識していました。2023年頃から社内での環境整備を始めていましたが、当時はまだ正式な組織ではなく、全社横断のワーキンググループとして活動している状態でした。

—それが正式な全社組織になったのはいつですか。

宮崎氏:2024年4月です。生成AIが経営に与えるインパクトが極めて大きいと判断され、専任組織として本格的に推進していく必要があるとの結論に至り、「AIトランスフォーメーション推進本部」が正式に発足しました。当社は「DX by AX toward SX」というコンセプトを掲げています。AIを活用してDXを推進し、それをサステナビリティと結びつけていく。AI活用が単なる業務効率化ではなく、企業の持続的成長と社会貢献に直結するという価値観が込められています。

—推進本部のミッションを教えてください。

宮崎氏:大きく4つの柱があります。1つ目は「事業貢献」。IT企業・SIerとして、生成AIやAIエージェントの価値を顧客に届けていくこと。2つ目は「社内浸透」。全員が生成AIを利用できるように、風土醸成や環境整備を進めます。3つ目は「開発業務での活用」。当社の主要業務である開発において、いかにAIを活用していくか。4つ目は「リスク・ガバナンス」の整理です。

利用率35%の壁─「どの業務で活用すればよいのか」という現場の声

アンケートで浮き彫りになった理想と現実のギャップ

—全社浸透を進める中で、当初の生成AIの利用状況はどのようなものでしたか。

宮崎氏:経営判断として、「社員の生成AI利用率を100%にする」という明確な目標が掲げられました。そのうえで当時の利用状況を把握したところ、当時の業務利用率は35%でした。なお、この数値は「業務で」「週数回以上利用している」方のみをカウントしたもので、プライベートでの利用のみの方や、試しに一度触れただけの社員は含まれていません。

こうした実態を把握したうえで、生成AIが与えるインパクトを考えれば、特定の部門や一部の利用者に限らず、スタッフ部門や間接部門を含めた全業務領域で変革を進める必要がある、というトップの強い意向で「全社員が業務で日常的に活用する=利用率100%をめざす」という方針が打ち出されました。

—100%という目標に対して、現場はどのような課題を抱えていたのでしょうか。

宮崎氏:アンケートを詳しく見ると、約半数の社員が「関心はあるが、まだ使えていない」と回答していました。「現状の業務では使えない」などと拒絶しているわけではなく、最初の一歩を踏み出せていない状況でした。「自身の業務のどこに活用すればよいかわからない」「具体的なユースケースを知りたい」という声が多く、「自分の業務にどう当てはめるか」が具体化できていませんでした。

APPROACH

解決策

・経営主導で「利用率100%」という明確な目標を掲げ、トップダウンで方針を示す
・組織風土に適した全社員参加型施策として生成AI活用アイデアコンテストの設計・実施

全社を巻き込むアイデアコンテスト開催の舞台裏

全社的なムーブメントを生み出す打ち手の検討

—そのギャップを埋めるために、なぜ「アイデアコンテスト」という打ち手に至ったのでしょうか。

宮崎氏:一番直接的なきっかけは、幹部から「コンテストをやってみたら」という提案があったことでした。ただ、実はその話が出る前から、現場でも「生成AIに関するイベントはないのか」という声が上がっていたんです。

トップダウンで方針は示されていたものの、それだけでは全社的な行動変容にはつながりにくいと感じていました。そこで、トップと現場の熱量を掛け合わせ、ムーブメントを一気に起こすための分かりやすいイベントとしてコンテストに行き着いたのです。

酉和氏:日立ソリューションズにはもともと「新しい技術に関心の高い社員が多く、面白そうな取り組みには積極的に参加する」という組織風土がありました。トップと現場の両方から自然と声が上がるような土壌があったからこそ、こうしたコンテスト形式にすれば、コアな層が参加し、それが周囲へ波及していくことを期待しました。

「質より量」を追求したコンテストの全体像と設計の工夫

——アイデアコンテストの全体像と、参加ハードルを下げる工夫について教えてください。

<アイデアコンテストの全体像について>
https://www.hitachi-solutions.co.jp/company/press/news/2025/0917_1.html/

宮崎氏:コンテストは半年サイクルで実施しました。グループ各社の社員が個人でもチームでも参加できます。KPIとしては、年間(コンテスト開催2回分)で750件の応募を集め、その中から全社で共有できる質の高いナレッジとして「本選レポート」を年間150件(半期で75件)創出することを目標に置きました。

エントリーから最終選考までは、大きく以下の3つのフェーズで進行しました。

予選(書類審査): 4月に募集を開始し、6月の予選では、約1,100件の応募から実用性や成果が期待される活用アイデアを約100件選出しました。
本選一次: 予選通過者から追加提出された「本選レポート」に対して、全社員による投票のほか、ギブリーの有識者や当社のデータサイエンティストらによる書類審査を経て、20件のアイデアに絞り込みました。
最終審査: 9月にプレゼン形式で実施し、「実現可能性」「効果」「発展性と横展開可能性」などの観点で評価を行い、最高位の社長特別賞などを決定しました。

設計で最も重視したのは「質より量」という方針です。理想は質の高いアイデアが多数生まれることですが、第1回目の今回はとにかく「一人でも多くの人が参加し、触れる機会を作ること」を最優先しました。予選は簡易なアンケート形式とし、プロンプト作成スキルがなくても「この業務にAIを活用できるのではないか」というアイデアレベルの記述のみで応募できる設計としました。さらに、参加を後押しする施策として、応募者全員に参加賞を設定し、最高位の社長特別賞には100万円が用意されました。

参加ハードルを下げながら「質」をどう担保したのか

—参加ハードルを下げる一方で、質はどのように担保したのでしょうか。

宮崎氏:質の担保は、段階的な審査設計によって実現しました。予選通過者には、本選審査の段階で、生成AIの適用業務や活用アイデア、効果について詳しく記載した本選レポートを提出してもらっています。審査基準は技術的な要素や効果だけでなく、「業務分析の深さ」や「人とAIの適切な役割分担」という観点も重視し、多角的に評価する設計にしました。

IMPACT

効果

・生成AIの業務利用率が35%から85%へ向上
・約1,100件の応募から実務に直結するユースケースが約100件創出・横展開
・AIの日常的な活用が組織文化に浸透し現場の自発的な活用が進んだ

ギブリーの伴走支援の取り組みとその効果

少数精鋭の推進体制と、ギブリーをパートナーに選んだ理由

—今回のコンテスト運営において、ギブリーをパートナーに選ばれた理由を教えてください。

宮崎氏:AX戦略部は基本的に4名体制で、コンテスト運営に直接関わるのは2〜3名という少数精鋭です。全社規模のイベントを内製だけで回すのは難しく、外部パートナーの力が必要でした。ギブリーさんを選んだ理由は、AIの技術的なレクチャーにとどまらず、全社の多種多様な部署に対して「業務にAIを組み込む」豊富なノウハウや実績がある点です。

単なる運営代行ではない、自社に合わせた柔軟な支援体制

—実際の支援内容はいかがでしたか。

宮崎氏:支援範囲は非常に広く、既存メニューを当てはめるのではなく、当社の状況に合わせて柔軟にカスタマイズした支援をしていただきました。 例えば教育コンテンツの提供でも、予選段階では「業務の棚卸しとAIの使いどころの見つけ方」を中心に実施しました。そして予選通過後には、本選に向けて選考通過者のユースケースの質をさらに高める(ブラッシュアップする)目的で、「アイデアを実装するためのプロンプトエンジニアリング」を中心としたセミナーを設計してくれました。選考フェーズに合わせて最適なサポートをしていただいたと感じています。

—応募数が想定を大幅に上回ったそうですね。

宮崎氏:はい、当初300〜400件の想定に対し、約1,100件もの応募が殺到しました。想定を大幅に上回る応募数に、当初は対応方法の再検討も必要となりましたが、スケジュールの遅れが許されない中、ギブリーさんには評価基準をプロンプト化し、当社の生成AI環境を活用して予選選考を一部自動化するなど、柔軟に審査プロセスをご支援いただきました。

生成AI利用率向上とユースケース創出による普及・定着

—コンテストを含めた一連の取り組みの結果、どのような成果が得られましたか。

宮崎氏:生成AIの業務利用率は大幅に向上し、2024年12月の35%から、コンテスト開始後の2025年6月には75%に、さらに9月には85%へと大幅に上昇しました。コンテストが利用率向上の主要因の一つであったと評価しています。また、約1,100件もの応募が集まったことで、応募内容を当社で定めた84種類の業務ラベルで分類することができ、「ここにアイデアが集まるということは、現場が課題を感じている領域なのだな」と、これまで見えていなかった業務課題の特定にも繋がりました。

酉和氏:予選通過者から提出された本選レポートは「ユースケース」として全社に公開され、共有ナレッジとして循環しています。「あの部署のユースケースをうちでも使いたい」という問い合わせが自然に生まれるなど、自発的な横展開が生まれています。

社内文化の変化と、埋もれていた先進的アイデアの発掘

宮崎氏:数字以上の大きな成果は、組織文化の変化です。最近では、オフィスを歩いているとあちこちで「AIを使ったらこういうのができるんじゃないか」という会話が聞こえてくるようになりました。AIが特別なものではなく、業務改善を検討する際の“前提条件”として議論に組み込まれるようになったと感じます。また、優勝したのは海外グループ会社からの提案で、自律的に複数タスクを遂行する高度な提案でした。ハードルを下げて網を広げたことで、社内に埋もれていた先進的な技術やアイデアを発掘できたことも大きな収穫でした。

次のフェーズへ─「量」から「質」への進化とカスタマーゼロ戦略

利用率から「実効性」へのシフトと、裾野の拡大

—利用率が85%まで到達した今、次に見据えているフェーズは何ですか。

宮崎氏:現在開催中の第2回コンテストでも多くの応募があり、1年足らずで合計1,800件以上のアイデアが集まりました。今後は、コンテストで出たアイデアをAIエージェント化し、実務に落とし込む活動も進めていきます。また、まだアイデアの提出が少ない「AI活用の色が薄い領域」の中にも、ポテンシャルのある業務がないかを見極め、AI利活用のさらなる裾野拡大を図っています。

カスタマーゼロ戦略による事業貢献

—最後に、今後の展望をお聞かせください。

宮崎氏:日立ソリューションズは「カスタマーゼロ」という考え方を重視しています。世の中に提供する前に、まず自分たちが使ってみる。コンテストを通じて得た知見や実用的なユースケースは、そのまま当社がお客さまに提供するビジネスの強力な資産になるでしょう。今後も自社での実践を通じてDXおよびAI活用を高度化し続けることで、お客さまから選ばれる企業であり続けたいと考えています。

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株式会社日立ソリューションズ

日立グループのデジタル事業をけん引する中核企業として、社会生活や企業活動を支えるさまざまなソリューションをグローバルに提供しております。

創業以来、従業員を最も貴重な経営資源と捉え、人的資本経営やウェルビーイング、人財育成などに力を注いでまいりました。また、データやAIを活用したデータドリブンによる事業運営も推進し、持続可能な経営の実現に取り組んでいます。
さらに、欧米、東南アジア、インドに拠点を設け、世界中のパートナーと協創し、最先端デジタル技術やベストプラクティスを採り入れたソリューションを開発しております。

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